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2025/03/18

寂しがり屋のりんごちゃん

 


りんごちゃんは一人でいるのが大好きでした。

りんごちゃんは人の中にいるのも大好きでした。


ただりんごちゃんは、ひとりぼっちでした。だれも、彼女の心を覗こうとしませんでしたから。というのも、りんごちゃんは、だれにも心を開けようとしなかったので。


人々は、これ以上は、とか、君のことはわからない、とか美味しくない、とか裏切りだとか

そういうふう形容したので。


りんごちゃんは、大丈夫そうに見えました。強い生命力と意志があるように見えたものですから。


いくつかの収穫の時期を経ていくつかの新しい土を踏み、とうとうりんごちゃんにも天使がやってきました。


「さびしかったんでしょう、ひとりで」


その声はりんごちゃんを真っ赤に真っ赤にしてりんごちゃんは、高い高い木の上から、ホトッと天使の大きな手のひらに、そして包まれました。りんごちゃんは、もうさびしくありませんでした。


ものがたりは、これでおしまいです。


にんげんもさびしくなるときがあります。

そういうときはどうしたらいいでしょう。

高い高い木にのぼってもっとずっと高いところへ行って、天使にでも拾ってもらいましょうか。土の中へ土の温かさの中へ落ちて踏まれて腐って誰かの養分になるのも悪くないですね。

でも、それはほんとに望んでいることでしょうか。


わたしにはわかりません。

わたしにはわかりませんが、ただわたしには、りんごちゃんはだれといてもさびしいときを感じているように思えます。


本当のところはわかりませんが、さびしさは、間の大事な音だとおもいます。


私と貴方の。

貴方と世界の。

貴方と貴方の。


叩いてみませんか、とりあえず、まずはそっと。

「あの、いますか?」

むこうも叩いてくるかもしれません、さびしさの音を。

本当にはわかりません、でもきっと叩いたら、貴方の耳にも音がきこえてくるはず。

「あの、いますよ」って。