外周
中学に入学すると、バスケ部に入った。
最初に一年生がやることはおもに運動能力の向上。
校舎を囲む四方の直線を毎日3週してタイムを計る。一周330メートルの3回の道のりを囲むのは、広い校庭で野球部にサッカー部、陸上部にテニス部、ハンドボール部がそれぞれ練習していた。
裕美ちゃんは一番心臓が強かった。先頭はいつも彼女で、わたしは彼女のペースをたよってとなりを走る。
好きな男の子が野球部にいたし、サッカー部の男子連中やハンドボール部の友達に、「わたしも、がんばってるよ」って伝えるのにはうってつけの直線を走るのは楽しかった。でもそれは、外周三週目の3直線まで。
最後の直線、裕美ちゃんは、余裕の加速で全速力のわたしを追い越して行く。わたしの息はいつも彼女の背中を見ているしかなく、走っても走ってもわたしの景色は彼女で。彼女はいつも一番になって走ることが、彼女の世界になっていて、わたしは羨ましかった。
大勢の中での一番では、その世界を自分のものにすることができるから。
けれども二番は二番。自分のすべてで走り切っても、だれかの次というのはなんかおかしい気がしたわたしは、その時から同じゴールを指すのはやめて別の道を走ることに決めた。
ただ頑張れなかっただけなのかもしれないし。
ただ受け入れられなかっただけなのかもしれない。
何れにしても、わたしは自分の道を進むことに決めた。
外周2週して、3週目で3つの角を通って最後、全速力の直線はもういらない、でもどこへ行けばいい?道はあるの?ゴールはあるの?ゴールは正しいの?
たくさんの質問。
そんなことわからない。
わからないけど、
もうあの最後の直線を走らなくてもいいんだって思ったら、なんか安心したから。
もう、大丈夫だと思う。